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[コラム]男性不妊治療の最前線から

■第4回 男性不妊と精巣腫瘍治療

■男性不妊と精巣腫瘍治療

 人口10万人に1-2人と稀ではありますが、20代や30代などの生殖年代の男性にもっとも多い悪性腫瘍が精巣腫瘍です。
以前は若い男性の患者さんが悲惨な経過をたどる悪性腫瘍の代表でしたが、近年の医学の進歩により、悪性の精巣腫瘍であっても手術や抗がん剤、放射線治療などを組み合わせた集学的治療によって、高確率に根治が期待できるため、早期発見,早期治療が望まれます。

 一方,生殖の側面から見ると、治療法によっては造精機能(精子を作る能力)の低下や消失にもつながることがあるため、生殖年代の患者さんにはとても厄介なものとなります。

 精巣腫瘍の治療の第一歩は、“疑わしきは罰する(摘除)”の名のもとに高位精巣摘除術という手術が行われ、基本的には腫瘍側の精巣がすべて摘出されます。そして、摘出された腫瘍の広がりや腫瘍細胞の悪性度の評価(病理検査)に加え,CTなどにより転移の有無が調べられ,腫瘍摘出の手術に追加して抗がん剤治療や放射線治療などを行うかどうかが検討されます。

 神様が非常に大事な臓器は2つ作ってくださっていますので、精巣は一個になっても子作りには問題ありませんが、抗がん剤治療や放射線治療を行うことになると、残された精巣の生殖機能への影響が問題となります。

 精巣腫瘍に対する抗がん剤治療では、シスプラチンやカルボプラチンなどの白金製剤を中心に治療を行うことが多く、使用する薬剤の種類・量や使用期間(サイクル数)などによりますが、抗がん剤治療後に精子を作る造精機能が低下する可能性が報告されています。昨年の千葉大学泌尿器科からの論文(Reprod Med Biol. 2015; 15: 175-181)によれば、シスプラチンを使用した化学療法後に、精子が出現する可能性は85%程度であり、精液所見が正常化する可能性は54%程度で、それまでに40カ月程度の期間を要すると報告されています。

 万が一、精子を作る能力が低下して、精子の所見が極端に悪化したり、精子がいなくなってしまい元に戻らない場合には大変なことです!そのような万が一の場合を想定して、精巣の摘出前や抗がん剤治療前には精子を凍結保存しておくことがすすめられます。

 また、最近では腫瘍が比較的小さく、ある程度安全な距離がとれる場合には、摘出した精巣の腫瘍以外のところから精子を回収することも行われるようになってきています。

 精巣腫瘍に限りませんが、抗がん剤治療や放射線治療の前に造精機能障害の可能性や将来の挙児のための精子保存に関する説明のないことがいまだにあるようです。

 泌尿器科においては従来から精巣腫瘍イコール摘出の発想があり、もちろん悪性の可能性があるので早急に治療を進めなければいけないのですが、精巣腫瘍が完治する病気になった現在では,将来を見据えて、生殖能力を必ず担保しなければいけないことを、患者さんやご家族に知っていただいて、積極的に精子凍結保存や組織の回収を医療者側に検討してもらうことが大事だと思います。
 当院では、精巣腫瘍を含め様々な癌治療前後でのご受診が多数あり、癌治療のスピードに合わせて積極的に対応しておりますので、是非ご相談ください。

                              恵比寿つじクリニック 副院長 助川 玄

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