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[コラム]男性不妊治療の最前線から

■第6回 精子に対する免疫反応 (抗精子抗体)

■精子に対する免疫反応 (抗精子抗体)

風邪をひいたり、感染症になった時など、外部から体内に異物(細菌やウイルスなど)が侵入した際には、そのような外敵『抗原』から自分の体を守ろうとする免疫機能が働き、『抗体』を作るということを耳にされたことはないでしょうか?抗体とは免疫反応により体内で作り出されるたんぱく質のことで、抗原と結合することで体を抗原から防御します。

ところで、この抗体が不妊の原因になることがあることをご存じでしょうか?
精子を外敵と見なして体内で作られる抗体を『抗精子抗体』と呼び、抗精子抗体のせいで自然妊娠が困難になる場合があることが知られています。女性側、男性側ともに抗精子抗体ができてしまう可能性はありますが、ここでは男性側における抗精子抗体についてお話しましょう。

抗精子抗体は、不妊男性の3%程度にみつかるとされており、血液検査や精液検査によって調べることができます。抗精子抗体には,精子同士がくっついて集まって(凝集)しまう抗精子凝集抗体や、精子の動きを止めてしまう抗精子不動化抗体というものなど、いくつかの種類がこれまでに確認されていますが、抗精子抗体が精子の運動を妨げることによって、男性不妊症の原因となるのです。

では、なぜこのような抗精子抗体が作られてしまうのでしょうか?まだ分かっていなことが多いのですが,女性側では侵入してくる精子を外敵と捉えてしまい、侵入を防ごうとすることは理解しやすいですよね。

では,もともと男性の体のなかで作られている精子に対してなぜ抗体を作ってしまうのでしょうか?実はわれわれの体では、精子と血液は直接触れ合うことはないようにバリアされています。非常に大切な細胞には血液のなかに有害な物質が入っても接触しないようにできているのでしょう。脳も同じようにバリアで守られています.しかし、精巣上体炎などの炎症、精巣や精巣上体の外傷、精管結紮術(パイプカット)等の手術により、精子が血液中に入ってしまうと、体としてはこれまで出会ったことがないものですから,精子を外敵『抗原』と認識してしまい、抗体を作ってしまうことがあるのではと考えられています。

なかなかご妊娠になれない男性だけでなく,これから子作り開始という男性でも、精巣上体炎をおこしたことがあったり,外陰部を打撲したことがあったりしたら,精液検査を受けて精子の動きを確認したほうがいいです。精液検査で精子の運動性が低いと診断された方は、抗精子抗体ができている可能性がありますので、チェックすることがすすめられます。抗精子抗体が陽性であった場合には,それ自体を治療する有効な方法はありませんが、抗精子抗体ができていても、妊娠できないというわけではありませんので勘違いしないでないでください!

抗精子抗体の影響が強くなく、運動精子がそれなりに存在すれば,タイミング法や人工授精での妊娠を目指すことも選択肢として考えられます。影響が非常に強いと判断されれば、顕微授精などの治療に進んだほうがよいこともあります。(Reprod Med and Biol. 2005; 4: 133-141)

また、精子の動きが悪くて,抗精子抗体が陽性でも,抗精子抗体以外にも精子無力症の原因がある場合があります。例えば、前回のコラムにて取り上げた精索静脈瘤ですが、手術により精液所見や精子の質の改善が期待され、たとえ体外受精/顕微授精に進むにしても成功率の向上に結びつきますので,抗精子抗体が(+)であっても治療を考えるべきです。不妊の原因の約半分には男性も関わっています。ご主人に問題があるなら、それを改善して、奥様の負担を少しでも減らすのが男性不妊治療の目的のひとつです。

当院でも、精液検査において精子の運動性にある程度以上の問題のある方には、抗精子抗体の検査をおすすめし、施行しておりますのでぜひご相談ください。

                         恵比寿つじクリニック 副院長 助川 玄

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