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内科診療情報

女性の高脂血症治療

高脂血症が冠動脈疾患の発症・進展に強く関与することはよく知られていますが、女性は閉経後にその頻度が急速に増加します。その原因として、中高年女性の肥満傾向、運動不足などに加えて、エストロゲンの低下が脂質代謝や血管平滑筋・内皮機能の異常を引き起こすためと考えられています。女性には妊娠、出産、閉経など特有の身体状況があり、高脂血症の治療においても男性とは異なった注意が必要となります。

I.閉経前の高脂血症治療

閉経前女性の場合、中等度の高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症が認められても他に糖尿病・高血圧・冠動脈疾患早期発症家族歴などの危険因子の合併がなければ食事療法、運動療法が中心となります。これは女性ホルモンの抗動脈硬化進展作用により、閉経前に冠動脈疾患を発症することはまれであるという事実に基づいています。
妊娠中、脂質は胎児・胎盤系の細胞構成成分、エネルギー供給源となるために生理的に増加します。
高脂血症は妊娠により増悪すると考えられますが、高中性脂肪血症の女性が妊娠した場合、急性膵炎を引き起こすことがあり注意が必要となります。
妊娠中の高脂血症は合併症がない限り食事療法(低脂肪食)、運動療法主体の非薬物療法を行います。HMG-CoA還元酵素阻害薬、クロフィブラート系薬剤は、現在のところ妊婦に対する安全性は確認されていません。

II.閉経前の高脂血症治療

エストロゲンと血清脂質濃度の年齢による推移を見ると、総コレステロールは50歳前では女性に比べ男性の方が高値ですが、50歳以降逆転し、女性が高値となります。HDLコレステロール(善玉コレステロール)濃度は、50歳までは女性の方が高値ですが、その後性差が消失し、ともに低下します。中性脂肪濃度は、30歳頃より上昇し60歳頃にピークとなります。女性の場合、これらの変化はエストロゲンの欠乏によって起こり、閉経期を境に高脂血症が増加し、ひいては心血管系合併症の発症につながると考えられます。高脂血症が冠動脈疾患の強力な危険因子であること、閉経後高脂血症の頻度が急増することを考えると、女性において閉経後に冠動脈疾患の発症が増加する最大の要因は、血中コレステロールの上昇であると推察されます。
閉経後の高脂血症の治療も、食事療法、運動療法が基本です。これら非薬物療法にて十分なコントロールが得られない場合は、薬物療法を加えることになります。
2007年2月、動脈硬化学会の高脂血症ガイドラインが改定されました。高脂血症という名称が脂質異常症と変わり、治療目標値から総コレステロールがはずれ、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値で評価することになりました。このガイドラインにおいても「55歳以上の女性」が危険因子としてとりあげられており、閉経後女性であればすべて危険因子とみなされることとなり、より厳しい管理基準で治療を行う必要があります。
女性ホルモンという遺伝的恩恵をうけ、閉経前では心血管への保護作用を受けています。そのために閉経後においても冠動脈疾患のリスクが低いと誤解され、危険因子の管理が十分に行われていないのが現状です。しかし女性では心筋梗塞を発症した場合の予後が悪いとの報告もあり、閉経後女性の高脂血症治療の重要性が指摘されています。

脂質異常症の診断基準(2007年)

カテゴリー危険因子の数LDLコレステロールHDLコレステロール中性脂肪
I0< 160mg/dl
II1~2< 140mg/dl≧ 40mg/dl< 150mg/dl
III3 ≦< 120mg/dl
危険因子年齢 男性 ≧ 45才、女性 ≧ 55才
高血圧
糖尿病(境界型を含む)
喫煙
冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の家族歴
低HDLコレステロール血症(<40mg/dl)

* 糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症があればカテゴリーIIIとする
* 冠動脈疾患の既往があれば、LDLコレステロールの目標値 < 100mg/dl