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男性不妊症

精子保存(がん治療の前に)

 悪性の病気(がん、肉腫、白血病など)の治療の前には、精子を凍結保存することを考えてください。抗がん剤治療や放射線治療、また外科的手術のうちのいくつかでは、精巣機能障害、射精障害、精路の閉塞をきたすことがあり、実際に抗がん剤であるアルキル化薬などを投与された男性の90-100%が急性の無精子症になることが知られています。

 治療法が進歩したことにより、悪性の病気であっても完治される患者さんが増えています。もちろん目の前の病気を治すことが第一ですが、治った後の人生を考えるときに、お子さんを授かる希望があるのと、ないのでは大きな違いです。治療前の良好な精子を保存していれば、奥様に負担をかけることなく、人工授精でお子さんを授かることができます。

 無精子症になっても、治療が終了すれば再び精子が回復してくる可能性はあります。しかし、どういう患者さんが完治し、悪性の病気から生還されるのか、あるいはどういう患者さんであれば治療後に精子が回復し、妊娠できるような状態に戻れるのかを治療前に予測することは、残念ながら現在でも出来ません。ですから、悪性疾患の治療を受けなければならない男性は、将来お子さんを希望される可能性があれば、すべての患者さんが精子を凍結保存するべきです。治療を受けても精子がなくならなかったり、治療後に精子が回復してくれば、そのときは精子の保存を止めればいいのですから。

 精子の凍結保存は、できれば悪性疾患の治療が始まる前に行うべきですが、どうしても治療を優先しなければならないときもあります。その場合は、治療開始後であっても無精子症になる前であれば、精子を凍結保存することができます。付け加えると、動物実験のデータからみると、抗がん剤治療終了後1年から2年は避妊するほうが良いと考えられています。

 精子の凍結保存では、凍結する際、さらに融解する際に精子にダメージが加わる可能性があります。しかし、保存期間については20年以上の長期に渡っても問題はないとされており、長いところでは28年間凍結保存していた精子で人工授精し、無事出産された報告があります(Fertil Steril 2005;84:1017)。

 最後に、精子はご本人だけのものであり、もしご本人が亡くなられれば凍結精子も廃棄しなければなりません。同様に、わが国では亡くなられた方からの精子採取やその精子の凍結保存は行われていません。