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性感染症(STD)

性感染症(STD)のうちで、男性不妊症の原因となるものとして重要なのは淋菌およびクラミジア感染症です。これらに感染すると、男性では尿道炎を起こし、ほっておくと精巣上体炎にまで進行します。精巣上体炎を起こしてしまうと、治っても精路(精子の通り路)が塞がり、その結果無精子症となってしまうことがありますから大変に恐い病気です。

淋菌感染症
淋菌は非常に弱い菌なので、性行為以外で感染することはまずありません(銭湯で淋病をうつされたとかいうのは、ありえません)。男性では、淋菌に感染すると、性的行為から2〜7日して排尿時の痛み、尿道からの膿の排出などの尿道炎の症状が出現します(淋菌性尿道炎=淋病)。膿の量はかなり多く、黄白色です。この尿道炎をほっておくと、淋菌が精管をさかのぼっていき、精巣上体に炎症を起こします(精巣上体炎)。精巣上体は大きく腫れ、痛みが強く、熱も出ます。両側の精巣上体に炎症が起きると、治っても精子の通り道が塞がってしまい、無精子症となり不妊症の原因となります。診断は膿や尿のなかの淋菌を確認することで診断されます(淋菌)。淋菌の感染があるときは、20〜30%でクラミジアにもかかっており、必ずクラミジアの検査もしなければなりません。淋菌は抗菌薬(抗生物質)に抵抗力のある耐性菌が増えており、非常に問題となっています。米国でも2007年4月のCDC(疾病管理センター)の勧告として、淋菌感染症にはニューキノロンは使わないということになりました。現在はセフォジジム、セフトリアキソン、スペクチノマイシンの注射やセフィキシムの内服が推奨されていますが、当院ではセフトリアキソンの1回だけの注射を治療の第一選択としています。

クラミジア感染症
性感染症(STD)のうちで患者さんの数が最も多い病気です。クラミジアに感染すると、性的行為から1〜3週間で尿道炎の症状がでてきます。排尿時の痛みは軽く、痒み程度に感じられることもあり、尿道からの膿も淋菌のときと違って量が少なく、サラサラしています。さらに、女性と違って症状が出やすいとされる男性でも、最近では自覚症状がまったくない人が増えており注意が必要です(自覚症状のない20歳台の男性を調べてみたら、4〜5%がクラミジアにかかっていたという報告もあります)。クラミジア尿道炎の約5%で精巣上体炎を起こすとされますが、淋菌性の精巣上体炎と違って、腫れや痛みは軽く、熱もあまり出ません。かかっていることに気が付かないことも多いのに、無精子症となり不妊症の原因になるところは同じですので、むしろ淋菌よりクラミジアのほうがやっかいです。男性のクラミジア尿道炎、精巣上体炎の診断は、初尿(排尿の最初の部分)中のクラミジア・トラコマチスの核酸(DNA、RNA)を検出する方法が使われますが、最近では淋菌とクラミジアを同時に調べる検査法も開発されています。検査結果が出るのには5日間くらいかかります。治療はマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬の内服になりますが、当院では1回だけ服用すればよいアジスロマイシンを治療の第一選択としています。

【参考文献】
1.日本性感染症学会: 性感染症 診断・治療ガイドライン2004
2.米国疾病管理センター(CDC): 性感染症治療ガイドライン2006
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